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​理論値としての地方自治 ~県議選に寄せて~

2023/4/8

 おそらく小学校の公民の頃から、選挙って大事だね、住民自治って大事だね、というイデオロギーを我々は教え込まれている気がしますが、最近、これは政治学上の理想であって、理論値に過ぎないんだなということを痛感し始めています。

 そもそも市民が、選挙や住民自治に参画しなければならない理由は、他人や市場任せにしてどうにもならないものが存在するからだと思います。菖蒲の場合、交通や過疎といった地域課題にメスが入らないのは、それがメスを入れるべき政策課題として政府に認識されてないからでしょう。上杉鷹山公の「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という言葉は、まさに政策形成にも適用できると思います。為す(選挙や住民自治に参画する)から成る(地域課題が解決される)んです。(市場と非市場の関係性は省略)

 

 私はこのことに気付いて、2019年に本会を立ち上げました(政治的には中立)。これまで、思いを持つ普通の町民が政策形成に参画する場が無かったから、その場があれば地域課題も解決の方向に進むのではないかと。思いがあるなら、その思いを現実にしようと町民は行動するはずだと。実はこれが「理論値」だったんです。

 

 県議選の投票率は3~4割のようですが、「選挙は大事だと思いますか?」という問に対して「はい」と答える(よう洗脳されている)人は、それより多いのではと思います。この乖離は、政治や政策のあらゆる分野に適用できると思っていて、例えばH28の市民意識調査(回答率5割)で菖蒲の交通が不便だと答えた町民は7割で、少なくとも20000人×0.35=7000人の町民が交通が不便だと思っており、7000人の町民が菖蒲について思う節があることになりますが、思いを現実にすべく行動(市や議員等に相談、本会のイベントやアンケートに参加等)した人は7000人もいないでしょう。

 

 もちろん行動したところで思いが現実になる訳ではないから、というのもあると思いますが、「行動してまで現状を変えたい訳ではない」人が大多数なのだと思います。花が綺麗だったり店ができたり、日々の生活が楽しければそれでいいんです。あわよくば、誰かが地域課題を解決してくれたらラッキー。政治や政策の理想を求め、大衆の動員を図ろうとする人は、この点に注意する必要があって、少なくとも私は、大学で学んでいた地方自治の理想が、全て理論値であることを思い知らされました。まぁ、健康は大事だと思っていても、ストイックに健康生活する人は少ないのと同じな訳ですね。

 

 一方で、為さないと成らないのは理論上は変わらず「真」なので、どうすればより多くの人が、選挙にせよアンケートやイベントにせよ、政策形成に参画してくれるのかを最近は深く考えています。一つ思うのは、政治や政策は三角関数なのかもしれません。三角関数それ自体は、ほとんどの人は面白く感じないでしょうし、私も別に政治や政策それ自体を面白いと感じていません。でも、直角三角形の辺の比だけでなく、光や音を表せるとなった途端に、「すごい!」「面白い!」と多くの人が感じるのではないでしょうか。政治や政策も、形として見えれば面白くて、ちょうど花に癒されたり、お店でショッピングを楽しめるのと同じように、多くの人が興味を持ったり参画してくれたりするのだと思います。①個の延長で参画でき、②親しみやすく、③形として分かるもの。ただ、政治や政策は、特に初動は、形として見えづらい理想に寄りがちなので悩ましいところです。分野によっては、政府に頼らずに市民自ら提供してしまうことも考えられますが(店が無いなら自分が開くとか)、交通問題は市民側で提供できるものではないので、さらに悩ましい。

 

 最近Twitterに投稿している「ブラショウブ」も、実は、交通政策を形として見せる試みであったりします。政策はどこか遠い存在ですし、交通アンケートに答えるのは疲れます。でもどこか交通を、生活の身近なものとして感じてもらって、多かれ少なかれ関心を持ったり、あわよくば政策形成に参画してもらえればと思っている訳です。また最近、同じく交通改善に取り組まれている方を訪ねて痛感したのは、「○○しなければならない」という義務感に私は苛まれていました。実際、この地球上で誰も、菖蒲の交通を良くする具体的手段を知っている人はいない訳ですから、義務感を背負ったところで自分も誰もついて来れません。なので理論上の「○○しなければならない」は一旦置いておいて、もっと自由に、楽しいことや面白いことをやっていきたいです。

 

 最後に、熱海の奇跡で有名な市来氏の言葉に「人は、説得されて変わるのではなく、見て感じて変わるもの」があります。形として面白くなければ人が寄って来ないことに通じますが、以上のようなことを肉付けして、どんなに理論的・学術的に説得しても、行動しない人は引き続き行動しないでしょう。政治を毛嫌いする人は、本当に毛嫌いします。彼らに政策形成への参画の大切さを説得したところで無意味です。でも彼らも、花に癒されたり、お店でショッピングを楽しんだりしているでしょう。彼らをどれだけ「壁」のこちら側に引き込めるかが重要であり、それが、今回の選挙の勝敗にも繋がってくると思います。

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